見舞金の限度額
会社で従業員の医療保険に加入し、その従業員が入院などした場合は、入院給付金が契約者である会社に入金されます。
これをそのまま従業員に見舞金として交付するとその支払は臨時のボーナスとなります。
つまり、源泉所得税がかかり、役員の場合は定期同額給与に該当しないので損金不算入となります。
これを福利厚生とするためには「福利厚生(慶弔禍福)規程」に見舞金のコーナーを設け、その規程にしたがって交付する必要があります。
では、いくらまで認められるのか?これに関して重要な判例(国税不服審判所)があります。
審判所は某会社の社長の入院9回分の見舞金397.5万円について
45万円(5万円×9回)を超える352.5万円につき賞与(旧法)と認定したうえで、この額の損金算入を認めませんでした。
この判決以来、見舞金の上限は5万円が定説となりました。
社員旅行は一人10万円まで?
使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、
従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。
(1) 当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。
(2) 当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等
(工場、支店等で行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。
所得税基本通達36-30(課税しない経済的利益
・・・・・使用者が負担するレクリエーションの費用)の運用について
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上記通達には金額基準が明示されていませんが、国税不服審判所は一人当たり10万円までは非課税という見解を示しています(H10.6.30)。
注意点は
1.旅行が豪華かどうかは関係なく金額だけで判定すること
2.会社の負担割合は関係なく会社負担額だけで判定すること
3.否認された場合は10万円超の部分だけではなく根こそぎ全額否認であること。
などです。
開店花輪は広告宣伝費?
パチンコ屋や飲食店の開店の時に店先に取引先の花輪が並びます。
社名が出ているので「広告宣伝費」と考えがちですが、ちょっと早計のようです。
この裁判で交際費認定を受けた理由は
①原告会社が贈呈した花輪等は、花屋等で一般に開店祝い用として販売されている通常の規格の品で、これに取り付けられた垂幕や名札に、「祝」という赤色の文字や贈呈先の店舗名などともに、原告の会社が記載されてはいるものの、その業種等の記載まではないこと
②贈呈先の店舗には、他の取引先等からも同様の花輪等が贈呈され、これらが、店頭に並べて掲出されたこと
③原告会社における花輪等の贈呈は、原告会社から相手店舗に申し出る場合もあるし、相手先店舗から求められて実行する場合もあること
④原告が贈呈した花輪等の一基当たりの購入代金は、概ね10,000円ないし15,000円余りで、平均すると10,000円を多少上回る程度のものであった
以上のことからすると、本件花輪等の贈呈は、一般にお祝いとして行われているものと特に相違はなく、その主たる目的は交際目的のものと考えられ、それ以上に、広告宣伝というべき特段の事情は見当たらない。
ということです。
「花輪に業種や電話番号を入れればいいのか?」
という疑問もありますが、そこまでする会社はおそらくないですね。
社長の功績倍率は3.9?
平成11年12月10日札幌地裁の判決によると、下記の条件を満たす類似法人をサンプリングし平均額を計算したとことろ功績倍率は3.9となり、これを超える役員退職金を否認いたしました。
1.業種が原告と同じ法人
2.同族会社であること
3.退職事由が死亡でないこと
4.退職給与の計上されている事業年度が黒字であること
5.退職役員の役職が、代表取締役or会長職であること
6.退職役員の勤務年数が10年以上であること
7.売上げ金額が5億円以上200億円以下であること
この判決が出るまでは、功績倍率は3が上限と思われていたので3.9という数字を裁判所が用いたことは画期的でした。
「平均が良いということになると、法人のうち半数は常に否認されることになり不合理である 」
と原告は主張しましたが、これに対し裁判所は
「平均功績倍率を用いるのはベスト」としながらも「比較法人の退職給与がすべて適正な額の範囲内であるならば最高功績倍率を用いるしかない」
との見解を示しており、この点も注目されるところです。
社長から会長への分掌変更
事業承継と称して社長が退任して会長になり、退職金を支払うことがあります。
月給もかなり減額しますし、登記上の代表権がなくなるので責任は軽くなりますが実質的に会社を牛耳っているのは年金をもらっている元社長のままだったりします。
このような状況でこの「役員退職金」の支給が妥当なのかどうか争われた裁判が結審しました。(19.3.13)
結論として「役員退職金は否認」されました。
それまでの通達では要件として
①常勤役員が非常勤になったこと
②取締役が監査役になったこと
③分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上の減少)したこと
が掲げられていましたが
この裁判を受けて①②③の形式的な要件だけではなく分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く、という点が明文化されました。
「経営上主要な地位」が何かということは意見が分かれるところですが、先の裁判での否認の根拠は
①同族会社の持分が分掌変更後も変わりはないこと
②主要な取引先が代表者の交代を知らなかったこと
③分掌変更等が行われた後も業務の実態が従前と変わっていないと取引先が認識していること
などです。
やっぱり、顧客関係に微妙な影響が出る可能性はありますが社長交代の関係先への知らせ・告知は必要のようです。
良き相談相手への役員報酬は?
非常勤取締役である代表者の母に対する適正報酬額は、税務署が調べた類似業種の相場の平均額を妥当とした事例があります。
差額は過大役員報酬です。
(国税不服審判所:平成17年12月19日裁決)
(1)納税者が主張する「よき相談相手」というのは客観性・具体性に欠け、その裏づけとなる確たる証拠資料はない。
(2)当該取締役には決められた仕事がない。
この裁決の時は旧法の時代なので、非常勤役員への年一回の報酬は届出をしなくても損金算入できました。
しかし、この裁決の論点は定期同額給与ではなく給与の実質的判定です。
役員だから責任が発生するからといってそれだけで報酬が発生すると思うのは早計です。
その報酬に見合う妥当な職務が必要だと言うことです。